観光庁「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりモデル事業」地域観光人材育成座学研修を開催
当会が事務局を務める観光庁「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりモデル事業」の地域観光人材育成ワーキンググループのイベントとして、9月24日(水)富士山世界遺産センターで座学研修を開催致しました。
これは、ガイドだけでなく、地域のインバウンド観光に関わる様々なプレーヤーが、地域の観光人材をどのように育成して行ったら良いかを考える研修会シリーズの第1弾です。
今回は、フランスミシュラン社に30年勤め、ミシュランガイド事業部長も務められた株式会社NKBアドバイザー森田哲史氏と、Hike Hakone Hachiriを立上げ自らガイドとして活躍しながら、日本各地の自治体でインバウンド人材の育成について指導に当たっているニュージーランド人Anthony Everitt氏が登壇されました。
森田氏は、フランスの国際的企業本社での長年の勤務と生活の経験から、欧米豪の富裕層が、幼児から成人までどのような教育を受け、どのような人生観を持ち、何を求めて旅に出るのか、という観点から、目の前のお客様を理解するためのヒントをお話ししてくださいました。そして、人生という時間の中で、心が動かされることを、できるだけ数多く経験することが人生の幸せと考え、そのような人生を送るべく心を動かす訓練を教育として受けてきた人に対して、受け入れる側として何をして差し上げるべきかを一緒に考えました。
ゆったりとした時間の中で、自然に浸り、本物の歴史文化に出会い、地元の人と心通わせる。そうした心動く体験をして、ご自分の物語を紡ぐ。それが欧米豪富裕層のお客様にとっての旅であり、受け入れる側は物語を紡ぐお手伝いをする役割をして差し上げる。これが、世界を代表する老舗「旅づくり企業」でもあるミシュラン社で、旅の本質を見つめ続けてきた森田氏の辿り着いた結論でした。
Everitt氏は、生まれ育ったニュージーランドの近所のごくありふれた羊の牧場で、ある時、海外の観光客向けに高価な体験プログラムを提供している旅行業者に出会います。その時、自分にとっては全くの日常でしかないものが、異なる文化背景のお客様にとっては大きな価値を持つものであることに気づき、大きな衝撃を受けます。これは儲かる。それが旅行業界に進むことを決めた瞬間だった、とジョークまじりにお話しを始めてくださいました。
ニュージーランド政府観光局、オーストラリア政府観光局、南太平洋観光局、デスティネーション・クイーンズタウンなどで観光業に携わった後、日本に居を移し、自らが異文化の背景を持つことを活かして、欧米豪からのお客様に異文化に出会って頂くためのお手伝いをするためのツアー企画、催行、ガイド事業を、富士箱根伊豆国立公園を舞台に立ち上げられました。
人は、異なる文化と出会い、自分の価値を見出すために旅に出る。それがEveritt氏の辿り着いた結論。受け入れる側は、そうした異文化との出会いのストーリーを一緒に作るお手伝いをするための技術を磨くべき、と、色々な実例を引きながら教えてくださいました。
今回のレクチャーは、お二人に別々にお願いして、すり合わせをする時間もなく本番を迎えました。全く異なった経路で「旅」の本質に向き合ってきたお二人のエキスパートが、奇しくも同じ「物語を紡ぐ」「ストーリーテリング」に着地した瞬間に立ち会うこととなり、心から感動致しました。旅にかかわる者として、お客様のかけがえのない人生の瞬間が、心動かされる瞬間となるように、ご自分自身の価値を発見する瞬間となるように、物語を紡ぐ最高のお手伝いをしようと心に決めました。
